田上町のアトリエを拠点に、県内各地でのワークショップ(以下WS)や展覧会など、大活躍の食品サンプルアーティスト、藤井裕子さんを知っていますか?
今回は藤井さんのアトリエにお邪魔して、食品サンプルの魅力に迫りました。


食品サンプル教室 メコ☆しろSweets代表
藤井 裕子さん
「モノを見ていると色が分解して見えてくる」という藤井さん。その特殊な能力を駆使して本物さながらの色合いを表現。
魚に恋するアーティスト 藤井裕子さんってどんな人?

取材日、藤井さんのアトリエは、直前に迫った展覧会に使う作品がぎっしり並んでいました。圧倒される編集部員の視界に真っ先に飛び込んできたのは、リアルスケールで再現された魚屋さん風のショーケース。そこには寺泊〈魚の市場通り〉さながらの迫力で、瑞々しい食品サンプルの魚たちが並んでいました。
食品サンプルといえば、洋食やスイーツをイメージしがちですが、藤井さんが愛するのは“魚”。その微妙な色合いや質感など、一筋縄では表現できない複雑さに創作意欲が掻き立てられるといいます。
藤井さんが食品サンプルと出会ったのは8年前。元システムエンジニアで、出産を機に退職。始まりはお子さんとの粘土遊びでしたが次第に完成度にこだわるようになり「どうせなら本物そっくりに」という思いからどんどんのめり込んでいきました。「粘土作品は整った造形に価値がありますが、食品サンプルは違う。 パ ンケーキの焦げ目やかぼちゃの煮崩れ。 これらをいかに表現するかということへの挑戦」と藤井さん。基礎を学んだ以外はほぼ独学で、着色や表現方法は完全なオリジナル。この食品をどう表現したものかと、手芸用品やDIYコーナーでああでもないこうでもないと考え、自分なりのやり方を発見した時は何にも代えがたい喜びがあるのだとか。「最近はクリームに使う素材に手を加えてポテトサラダが出来ました。うれしかったなぁ」 とにっこり。 自己流だからこそ探求と挑戦が尽きない、充実感に満ちた表情が印象的です。





藤井さんが伝えたいものづくりの魅力

個人レッスンや展覧会、オーダー品の受注など、多岐に渡る活動の中で、最も多くの時間を費やしているのはWSだといいます。「WSはほぼ毎月、テーマもそれぞれ。時間が限られているので、パーツは準備しておいて、参加者には着色やテクスチャーを作ってもらいます。それでも百人百様で一つひとつ違う作品ができるのが面白いんです」。
昨年、年間1,500人が参加したという人気のWSは、ときには1回100セットのパーツを準備することもあるそうで「この準備が本当に大変。他のことをしている暇がなくなります」。そんな思いをしながらも開催を止めない理由について藤井さんは「人に喜んでもらえるから」と即答。「大人や子ども、障がいを持ったお子さんなど、いろんな方が参加していますが、みんなの “できた” の瞬間がうれしいんですよ」と顔をほころばせます。「それに毎回発見があるんです。あ、こんな風に見えているんだとか、こうやって表現するんだとか。表現方法に正解はないですから」。シロップがこぼれても、パンケーキに焦げ目がついても問題なし。そんな大らかで懐の広いものづくりが多くの人を夢中にしている理由なのかもしれません。
7月には東京で全国の企業が集まる商談会に参加しつつ、県内では〈越後天然ガス〉〈まちやま〉などでWS、各種講座も開催予定。そうした活動と並行して、長岡市で不登校や障がいを持った方向けのWSも開催していくそう。ものづくりが持つ力を信じて、藤井さんはこれからも皆さんの心に“美味しい笑顔”を届けていきます。


食品サンプル作ってみた!編集部がホットケーキづくりに挑戦!

樹脂同士が反応して熱くなるよ~

ホットケーキの質感!

べったり塗らず、かる~くこするように

フルーツやクリームの配色を決めて接着。シロップの色の調合も自分で!

美味しそ~!
食品サンプル教室 メコ☆しろSweets
藤井さんが自身のアトリエで開いている隠れ家教室『メコ☆しろSweets』での個人レッスン情報の他、今後のイベント、活動情報はHPをチェック!
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