子どもを育て森を守る 組み木絵本の世界

複数の木材を組み合わせて一つの形をつくる組み木。そこにストーリーを加えた“組み木絵本”を知っていますか?
世界三大デザイン賞『iF DESIGN』を始め、数々の賞を受賞した組み木絵本『おかえりどうぶつはうす』の作者、燕市出身のたかいゆきえさんにお話を聞きました。

組み木絵本作家 たかい ゆきえさん
燕市出身。デザイン会社でグラフィックデザイナーとして勤務後、独立しデザイン会社〈Ibiza〉を設立。2021年に組み木絵本『おかえりどうぶつはうす』、2024年『こねこのきょうだいとお花ばたけ』を発行。

編集部(以下 編)/組み木絵本って初めて耳にしました。どういうものですか?

たかいさん/これが一作目の『おかえりどうぶつはうす』なんですが、何もない状態で正しく組み立てるのはとても難しいんです。でもそこに絵本としてストーリーが加わると、物語が進むように組み木が完成していく。 絵本が取説みたいな役割をしているんです。

編/親御さんが読んで、お子さんが組み立てて、が基本。でも他にもいろいろな遊び方ができそうですね。

たかいさん/そうですそうです。赤ちゃんのころは、こうやって(うさぎのパーツを手に取って)にぎにぎするだけでも楽しいみたいですよ。

編/すべすべしていて、触り心地もいいですね。

たかいさん/木のおもちゃなので、素材にもこだわりたいと思って、無着色・無塗装で、木は魚沼市のブナの間伐材を使っています。子どもたちの感性を育てるおもちゃが地域の森を育み、守ることにも繋がっている。そんな循環を描いて選定しました。

▲〈まちトープ〉で行った個展にて真剣な表情で組み木を扱う子どもたち。

編/もともとデザイナーという経歴をお持ちのたかいさん。組み木との出会いを教えてください。

たかいさん/デザイン会社で会社員として働いていた時に<にいがた組み木の会>さんのチラシ制作のお仕事をもらいました。そこでチラシの枠を組み木の動物たちが連なって縁取りしているデザインを提案したらとても喜んでもらえて。さらに組み木の会の方が実際の組み木に切り起して持ってきてくれたんです。それを見て、めっちゃ可愛い!って感動しちゃって。そこからお仕事として組み木の図案デザインもいただくようになったり、私自身も社内の“組み木担当”みたいになっていきました。

編/仕事の中で組み木に触れる機会が増えていったんですね。

たかいさん/そのうちに自分の作品を作りたいという気持ちが段々と強くなっていって、組み木と絵本を組み合わせたら可愛いだろうなと少しずつノートに構想メモをつけていました。ここがキリンで、ここがカメでって時間をかけてお話とデザインを固めていきました。

当時の貴重な構想メモ。
組み木絵本の構想を練り始めたのは2017年ごろ。

編/その後、2021年に『おかえりどうぶつはうす』を発行。こちらはいろいろな賞を受賞して思い出深い作品になりました。

たかいさん/組み木と絵本のセットは珍しいので、 とにかくいろんな人に知ってもらいたくて、コンペに出し続けました。それまで自分がよく参加していたデザインコンペでは手応えがなかったのですが、モノとコトを評価する『ニイガタIDSデザインコンペティション』で大賞を取ってから自信がついて、キッズデザイン賞やグッド・トイ賞など、全部で8種類ほどの賞をいただきました。

編/昨年は地元・燕市での個展を開催、秋には工房もオープンされました。今後は地元での活動を増えていく予定ですか?

たかいさん/そうですね。組み木絵本って触ってみて初めてどういうものか理解してもらえることが多いので、これからも個展や工房でのワークショップなど、触れてもらえる機会を増やしたいなと思っています。

編/燕市の工房も絵本の世界とリンクしているようで素敵です。

たかいさん/ありがとうございます。 組み木絵本の世界観を実際の場所で表現出来たら、と思って作りました。こういう場所で作っていて、こういう活動をしているんだと、手に取る人の想像を膨らませたいと。そんな狙いで『工場の祭典』に合わせてオープンして、当日は糸ノコで組み木を切り出すワークショップを行いました。

編/すごい、糸ノコを使って。見た目ほど難しくないんでしょうか?

たかいさん/初めてでもそれなりに切れるんです。でもクオリティを上げていく作業が難しい。鍛錬の楽しさを感じて2日連続で来てくれた男性もいましたよ。

組み木職人さんの指導のもと行った糸ノコを使ったワークショップ。

編/新作『こねこのきょうだいとお花ばたけ』を2024年に発行。こちらはどんな作品ですか?

たかいさん/前作はいろんな動物でしたが、今回はお花の名前がついた猫ちゃんのきょうだいとママのお話です。

編/お母さん猫が子どもたちをパクッとくわえている組み木の表現がかわいいですね。

たかいさん/ありがとうございます。今はこの作品をもっと知ってもらいたいので今年は猫勝つしようと思ってます(笑)。それと実は3作目の新作も現在制作中で、今年か来年には発行できるかな、と思います。

編/組み木絵本作家としての活動は今年も広がっていきそうですね。

たかいさん/そうですね。組み木は全国の熟練の職人さんが一つひとつ手作業で切り出しているので、大量生産はできません。なので周知も販売も少しずつですが、いずれは燕市の産業として、また出産祝いといえば燕のコレだよね、といわれるくらいになれたらいいな、と夢は大きく持っています。

各作品の歌とコマ撮りアニメをYouTubeで公開中!

こねこのきょうだいとお花ばたけ 15,400円
おかえりどうぶつはうす 13,200円

くみ木の森
住/燕市渡部1806-6

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